通年性アレルギー性鼻炎、ダニ抽出成分飲み薬で改善
くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が表れるアレルギー性鼻炎。スギ花粉の飛散時期に急増する花粉症もその一つだが、季節を問わずに発症する「通年性アレルギー性鼻炎」に悩まされる人も少なくない。今年、根治が期待できる飲み薬が保険適用され、治療の選択肢の広がりに期待が寄せられている。
通年性アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、異物から人体を守る免疫が過剰に反応し、鼻などに炎症が起きる病気だ。引き金となる原因物質はアレルゲンと呼ばれ、花粉やハウスダストなどがある。
花粉などの飛散時期に関わらないアレルゲンで起こるものは、通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれる。全国調査では、このタイプの鼻炎を患う人の割合は1998年の18・7%から2008年には23・4%へと増えた。年代別では、10歳代以上の各年代でいずれも増加した。
原因物質と対処法
通年性アレルギーの原因物質は、ほこりやダニ、ペットの毛など。対処法としては、小まめに部屋を掃除し、ペットを寝室に入れないことなどが大切だ。
治療法
治療は、鼻の細胞の炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の点鼻薬、アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬などが中心だ。強い鼻づまりには、鼻の穴の粘膜表面をレーザーで焼く手術もある。ただし、いずれも、症状を抑えるだけの対症療法だ。
ハウスダストのエキスを少しずつ注射して体を慣れさせ、アレルギー反応を抑える治療もあるが、少なくとも2年以上通院する必要がある。
新たな治療法が登場
2015年5月、飲み薬「アシテアダニ舌下錠」が保険適用となった。日本医大(東京)耳鼻咽喉科教授の大久保公裕さんによると、この薬は、通年性アレルギー性鼻炎の原因の9割を占めるとされるダニに着目して開発された。ダニから抽出した成分を含み、これを服用して体を慣らし、症状改善を狙う。12歳以上が対象で、舌の下に錠剤を含み、溶かしてのみ込む。自宅で治療が可能で、注射薬に比べ患者の負担は軽い。
効果を確かめる臨床試験では、アシテアダニ錠と偽薬をそれぞれ約300人に44~52週投与した結果、アシテアダニ錠を投与した人たちの方が症状が改善した。
ただし、症状の改善や根治につなげるには2年以上かかると考えられる。また、薬による激しいアレルギー反応で呼吸困難などのショック症状が起きる恐れがあり、厚生労働省は、事前に講習を受けて十分な知識や経験を持つ医師が適切に使用するよう求めている。
従来の治療法
抗ヒスタミン薬
アレルギー症状の原因となるヒスタミンの働きを抑える
ステロイド点鼻薬
鼻の粘膜に噴霧し、炎症を抑える
レーザー手術
鼻の粘膜の表面をレーザーで軽く焼き、粘膜の容量を減らす
皮下注射
ハウスダストなどのエキスの皮下注射を一定期間行い、体を慣れさせる
新たな治療法
舌下免疫療法
ダニエキス入りの錠剤を舌の下で溶かし、その後のみ込む