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杉本クリニック便り Vol.119

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ご挨拶

院長 医学博士 杉本 一郎
        杉本 喜朗

 あちらこちらに春らしさを感じる今日このごろとなりました。今年初めには、石川県能登半島を中心とした地域が大規模な地震に襲われ、多くの尊い命が奪われました。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地にも明るい春の日差しが届き、1日も早く穏やかな日常が戻るよう願っております。

さて今年はフランス・パリで、7月26日から8月11日までオリンピックが、8月28日から9月8日までパラリンピックが開催されます。4年に1度の、世界最大のスポーツ祭典を見るのを楽しみにしている人も多いでしょう。スポーツが健康に良いのは万人の知るところですが、スポーツを見るだけでも実は体に良い影響を及ぼすことがわかってきました。

筑波大学の研究者らが全国60市町村の高齢者約2万人を対象に行った調査によると、月1回~年数回程度、何らかのスポーツを現地観戦している高齢者は、全く観戦していない場合に比べて「うつ傾向」になるリスクが3割低いことが確認されました。現地には行かず、テレビやインターネットで頻繁にスポーツを観戦している場合でも同様で、日ごろから自分が運動やスポーツを実践しているかどうかとは関係がありませんでした。

これまでスポーツに関心がなかった人もいるでしょうが、野球やサッカーをはじめ、実にさまざまなスポーツをテレビやインターネットでも観戦することができます。海外のプロチームで日本人選手の活躍ぶりを耳にすることも多くなりましたし、もっと身近なところで、地元のスポーツチームやクラブの応援をするのも楽しいでしょう。この春はぜひ「推し」のチームや選手を見つけてはいかがでしょうか。


今号(2024年春号)の内容

詳細は「杉本クリニック だより」をご覧下さい。

  • 自分にとって本当にバランスの良い食事とは?
  • そうだったんだ 体にしくみ
    胃と十二指腸のしくみ編
  • アイデア一つで身近なものが介護用品に変身!
  • お薬百科 医療機関で処方される薬を知ろう
    点眼薬(ドライアイ・抗アレルギー)編
  • 「パラリンピック」の競技紹介
  • 一口病気解説
    「嗅覚障害」 

 


自分にとって本当にバランスの良い食事とは?

 テレビ、雑誌、インターネット 健康情報に振り回されていませんか?

「痩せる」「お肌にいい」「がんを防ぐ」など、テレビ番組や雑誌、インターネットなどには食事に関する健康情報があふれています。情報への感度を高めることは大切です。でもこうした情報に頼り過ぎていませんか。まずは自分の体と普段の活動量を知って、バランスのとれた食生活を軸に据えましょう。

新型コロナ感染症の流行期には、人との交流が難しくなり、多くの人が情報源としてSNS(交流サイト)や通販サイトなどを利用するようになりました。テレビや雑誌などでも、著名人が自身のダイエット法を紹介するなど、個人の体験にすぎない健康情報が数多く発信され、混乱を招いている場合もあるようです。

一方、情報を受け取る側も、健康や美容に良い食品・食材として紹介されたものをうのみにしたり、特定の食材を大量に摂取したり逆に適度に控えたりして、食事のバランスを崩してしまうということが見受けられます。

そこで今回は、十分に精査された情報をもとにしたバランスの良い食生活について、原点となる身体の活動量と栄養素のバランスの面から紹介します。

 

活動量によって異なる必要なカロリー量

食生活の基本になるのが、カロリー(エネルギー量)と三大栄養素とされるたんぱく質、炭水化物、脂質の量とバランスです。必要なカロリー量は「身体活動レベル」、すなわち日常生活で体をどれだけ動かすかに大きく影響されます(図1)。厚生労働省は「国民健康・栄養調査」報告書の中で、1日あたりのエネルギー必要量のめやすを、各年代・男女別に、3段階の身体活動レベルごとに数値を示しています(図2)。

「身体活動レベル1」は、1日のほとんどを座って過ごす場合で、例えば高齢者施設で過ごす人や病気静養中の人などが該当します。「レベル2」は事務職などの仕事の人、「レベル3」は体を動かす作業を行う仕事のいわゆるブルーカラーの人などが当てはまるでしょう。余暇に活発に運動する人もレベル3に含まれます。

レベルが異なるとエネルギー必要量は大きく異なります。50~64歳の男性の場合、レベル1とレベル3では750キロカロリーもの差があります。これは一般的な昼食1食分に相当しますので、かなり大きな差だということがわかります。ただし個人差も大きいので、栄養指導などでは体重や体格指数(BMI)などで調査します。

 

三大栄養素のバランスが大切特にたんぱく質に注目

エネルギー必要量とともに大切なのが、三大栄養素のバランスです。国民健康・栄養調査2020年版では、基準となる栄養素の量(目標量)を、1日の摂取エネルギーに対する比率で示しています。それによると、たんぱく質は14~20%、脂質は20~30%、炭水化物は50~65%となっています。

たんぱく質と炭水化物は1gで4キロカロリー、脂質は1gで9キロカロリーのエネルギーとなりますので、50~64歳で身体活動レベルが2の男性の場合、たんぱく質の目標量91~130g、脂質は58~87g、炭水化物は325~423gとなります。50~64歳の女性で身体活動レベル2の場合は、たんぱく質の目標量は68~98g、脂質は43~65g、炭水化物は244~317gです。

この中で、最近注目されているのが、たんぱく質です。たんぱく質の摂取量が少ないとフレイル(虚弱:心身が衰えた状態)になりやすいとされているからです。65歳以上の日本人女性2108人を対象とした研究で、たんぱく質の摂取量が1日あたり63g未満の人に対して、70g以上の人では、フレイルに陥る比率が34~38%低いということがわかりました。

こうしたことから、「少なくともこれ以上は食べましょう」というたんぱく質の推奨量について、厚労省は、男性では50~64歳で65g、65歳以上は60g、女性では50歳以上で50gという量を示しています。

「そのぐらいの肉はいつも食べている」という人は、この数値が肉の量ではなく、たんぱく質の量であることに注意が必要です。例えば、牛肉100gに含まれるたんぱく質は22g、豚もも肉は20.5g、鶏むね肉(皮なし)は23.3gですので、鶏むね肉だけで女性に必要な50gのたんぱく質をとるためには、約215g食べる必要があります。食事量が減っている高齢者などでは、お腹がいっぱいになる前にまずたんぱく質から食べる「たんぱく質ファースト」がよいでしょう。ただ、大豆食品の豆腐には食物性たんぱく質が多いですし、小麦粉食品のパン、パスタなども炭水化物だけでなくたんぱく質を多く含みますので、これらの食品を含めて、バランス良く、家計にもやさしいメニューを考えるのがベストです。

また、いくら高齢者にたんぱく質が必要といっても、とり過ぎると消化器や肝臓、腎臓などに負担がかかります。食事でとり過ぎることはあまりありませんが、サプリメントなどで摂取する場合には十分注意してください。年をとっても健康で活動的な体をつくるためには、「活動量に見合ったバランスのとれた食生活」が大切です。

 


そうだったんだ 体のしくみ

 胃と十二指腸のしくみ編

胃の蠕動運動で食べ物は十二指腸へ

 口から入った食べ物は胃の中で消化され、吸収されやすい形になって十二指腸に送られます。

 胃の大きさは食べ物が入ると1ℓ以上になります。食道から胃につながる胃の入り口を「噴門」、十二指腸につながる胃の出口を「幽門」、その間を「胃体」といいます(図1)。胃の位置は姿勢や食べ物の有無で変化しますが、解剖学的に噴門は第11胸椎の高さで、みぞおちのあたり。幽門は第4腰椎の高さで、臍のあたりです。

 胃は3層の筋肉で襲われ、食べ物が胃に入ると、筋肉の働きで蠕動運動が起こります。食べ物と胃液を混ぜ合わせ、どろどろの粥状にして、2~4時間かけて十二指腸に少しずつ送られます。

 食べ物を消化する胃液は、胃の内側にある粘膜から分泌されます。1回の食事で胃液の分泌量は500㎖以上、1日に約2.5ℓといわれています。

 十二指腸は小腸の最初の部分で、C字の形をしている消化官です。胃の幽門と小腸の空腸をつなぎ、長さは25㎝ほど、指の幅12本分の長さであることから、この名前が付けられています。十二指腸に食べ物が入ると、膵臓から膵液、肝臓でつくられ胆嚢に蓄えられた胆汁が分泌されます。

強い酸性の胃液から粘液バリアが胃を守る

 胃液に含まれる胃酸は強い酸性で、固形物を分解し、食べ物に付着した微生物を殺菌する働きがあります。ではなぜ胃は胃酸で消化されないのでしょうか。それは胃の粘膜から出される粘膜で中和され、粘膜表面は弱酸性に保たれているためです。十二指腸でも粘液が出て、十二指腸を守っています。

 

 

 

 

ところが粘液の分泌量が低下すると、粘膜表面は傷害されます。粘膜を守る防御力と粘膜を傷害する力のバランスが崩れて、潰瘍ができると考えられています。胃にできた場合を胃潰瘍、十二指腸にできた場合を十二指腸潰瘍といいます。潰瘍の深さによって4段階に分解され、粘膜層だけの傷の場合はびらん、粘膜下層より深い傷の場合は潰瘍と呼ばれています(図2)。

潰瘍の原因はさまざまですが、胃潰瘍はピロリ菌の感染や消炎鎮痛薬などの薬剤が主な原因といわれています。ピロリ菌は胃粘膜を傷つけ、慢性的な炎症により胃がんの原因にもなっています。また過度の飲酒や喫煙、ストレスは粘膜の防御力を低下させるため、潰瘍ができやすくなります。

 


医療機関で処方される薬を知ろう!

 点眼薬(ドライアイ・抗アレルギー)編

 ドライアイやアレルギー性結膜炎で処方される処方点眼薬(目薬)を紹介します。

ドライアイ用点眼薬狭心症薬編

 ドライアイに悩む人は増えています。日本人10万人超を対象とした2021年の研究成果によると、ドライアイと診断されたか、または重症のドライアイ症状がある人は、40~74歳の男性の17.4%、女性の30.3%を占めていることがわかりました。画面を見続ける仕事に従事している人ではドライアイの比率がさらに高いこと、年齢を重ねるとドライアイの比率が高まることが示されています。

ドライアイの原因としては、スマートフォンやパソコンなどの画面を長時間見続ける際、まばたきの回数が減少することや、コンタクトレンズの使用やエアコンの送風を浴び続けるといった生活習慣により、涙の蒸発が進むことなどが考えられます。

ドライアイ治療用の主な点眼薬としては次のようなものがあります。

人工涙液

塩化ナトリウムや塩化カリウム、たんぱく質など、涙とほぼ同じ成分を含み、わずかに粘り気のある水溶液で、涙の補充に用います。防腐剤を含むものと含まないものがあり、防腐剤を含む薬剤はソフトコンタクトレンズをつけている時には使用できません。

ヒアルロン酸製剤

水の分子を取り込む作用があるヒアルロン酸ナトリウムを含み、目の潤いを回復させます。目の表面の組織である角膜上皮が傷ついた際、有効とされます。

ドライアイ改善薬

涙はほとんどが水分ですが、ドライアイになると水分だけでなく、糖とたんぱく質が結合した「ムチン」と呼ばれる粘り気のある成分や涙の表面を覆い、水分の蒸発を抑える働きがある微量の油分などが減少して、涙の質が低下することがあります。治療には、水分やムチンの分泌を促す薬剤も用いられます。ジクアホソルナトリウム(商品名ジクアス)やレバミピド(商品名ムコスタ)などがそれです。

抗アレルギー点眼薬

 花粉症などのアレルギー疾患では、くしゃみ、鼻水などの鼻炎症状とともに、充血やかゆみ、涙目などの目の症状に悩まされることがあります。例えばスギ花粉などが目に入って涙に触れると破裂し、内部のアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が飛び出し、さまざまな症状を引き起こします。

 このような時には、症状により抗アレルギー点眼薬が処方されます。最近では、処方薬と同じ成分を含み、処方箋なしで薬局で購入できる抗アレルギー点眼薬の市販品も増えていますので、選択肢として考えておくとよいでしょう。
 抗アレルギー点眼薬には次のようなものがあります。

抗ヒスタミン薬

 かゆみなどを引き起こす体内物質の一種であるヒスタミンH1の作用をブロックすることで目の炎症を鎮めます。

メディエーター遊離抑制薬

 アレルゲンが体内に入ってきた時、ヒスタミンなど、アレルギー症状を引き起こす物質が分泌されるのを抑えます。

免疫抑制薬

 免疫のメカニズムの働きを低下させることで症状を抑えます。通常の抗アレルギー薬では十分な治療効果を得られない重症のアレルギー性結膜炎(春季カタル)に用います。


一口病気解説 嗅覚障害

食べ物のにおいがわからないと、何を食べてもおいしくないものです。においを正常に感じられなくなっている状態を嗅覚障害といいます。

嗅覚障害の原因はいろいろありますが、一番多いのが、「呼吸性嗅覚障害」です。簡単に言えば花が詰まって空気が鼻の奥まで入らないことによります。鼻の奥にあり、においを感じる嗅上皮というところまでにおいの元が届かないわけですから、においを感じないのです。

他にも「嗅上皮性嗅覚障害」や「中枢性嗅覚障害」もあります。嗅上皮性嗅覚障害はかぜの後や慢性副鼻腔炎などで嗅上皮が炎症を起こした時にかかります。中枢性嗅覚障害は鼻から脳の中枢へ行く道筋が障害された時に起こります。交通事故や頭部外傷などでもこうした状況が起こります。

さらにアレルギー性の慢性鼻疾患により、鼻が常に、あるいは花粉症の季節に詰まったり、鼻水が出たりとぐずぐずした状態にあるために起こる呼吸性の嗅覚障害が多くなりました。また、嗅上皮に炎症を起こしてしまうタイプも多いようです。今後も、こうしたアレルギー性の鼻炎に伴って嗅覚障害を訴える人も増えていくのではないかと懸念されています。

嗅覚障害は、かぜなどに伴って一時的に起きたものなら経過とともに治りますので、問題はありません。しかし、アレルギー性の慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの疾患によって嗅覚障害が起きている場合には、その原因となる慢性性疾患の治療を行う必要があります。その治療で症状が改善されれば、それに伴い嗅覚障害も解消されていきます。

しかしそれだけでは嗅覚障害が完全には治らない場合もあります。このような場合には、副腎皮質ホルモンの点鼻療法などが効果的とされていますが、専門の医師の診断と、その他の治療」との兼ね合わせの上で行わなければなりません。

においの感じ方がおおかしいいなと思ったら、早朝に医師の診断を受けてください。


 

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