花粉症との関連 口の中にかゆみ、唇腫れ
果物を食べると口の中のかゆみ、唇の腫れなどの症状が出る「果物アレルギー」が増えている。花粉症との関連がある新しいタイプのアレルギーと考えられており、注意が必要だ。
神奈川県内の女性(31)は3年前リンゴを食べた際、口の中や喉の奥にかゆみを感じた。症状は15分くらいで治まった。その後モモやサクランボでも症状がでるようになり、病院で検査を受けた。その結果、リンゴなど数種類の果物が原因のアレルギーとわかった。
「それまで普通に食べていたので、まさか果物が原因とは思わなかった。今では、アレルギーを起こしやすい果物を避けるようにしている」と女性は話す。
国立病院機構相模原病院(神奈川県相模原市)のアレルギー性疾患研究部長、海老沢元宏さんは「果物によるアレルギーは増えている。花粉症の人が発症しやすく、関連があると考えられている」と指摘する。女性も花粉症だった。飲食して5分以内に口の中や唇にかゆみや違和感がでることから、「口腔アレルギー症候群」とも呼ばれる。子どもも大人も発症する。
果物や野菜には、花粉症のアレルゲン(アレルギーの原因となるたんぱく質)と似た構造のたんぱく質を含むものがある。花粉症患者が、これを食べると症状が出る場合がある。花粉症になって数年後に果物によるアレルギーを発症するケースが多いが、遅れる理由ははっきりしない。
花粉症の原因となる植物の種類によって、アレルギー症状が出る果物は違ってくる。カバノキ科のハンノキやシラカンバの花粉症は、リンゴ、モモ、サクランボといったバラ科の果物で症状がでやすい。ブタクサは、メロンやスイカなどだ。患者が多いスギ花粉症はトマトで症状が出るが、報告例は少ない。理由は不明という。
「分かっていないことも多く、医師でも、アレルギーの専門でないと、理解が進んでいない面がります」と海老沢さん。
横浜市立大学付属病院の皮膚科医、猪俣尚子さんは「口の中がかゆいだけと軽視してはいけない。まれですが、呼吸困難などの症状が出る場合もあります」と話す。特にシラカンバやハンノキの花粉症は、もやしや豆乳で重症化するケースがあり、口腔アレルギー症候群は低年齢化しており、3歳で花粉症を発症し、5歳で果物にも反応するようになった例もある。猪俣さんは「子どもは症状をうまく言葉にできない。より注意が必要」という。どうゆうたいさくをとればいいのか。
藤田保健衛生大学医学部小児科教授の近藤康人さんは、「果物を食べて違和感を覚える場合は、専門医を受信して」と勧める。血液検査で花粉症のアレルギーを調べ、果肉などを使う皮膚テストで判定する。抗ヒスタミン剤で症状を緩和できる場合もある。
口腔アレルギー症候群の原因となる果物のアレルゲンは、加熱すると分解される。ジャムや缶詰は症状が出ないことが多い。同じ果物や搾りたてのジュースを一度に多量に飲食しないことにも気を付ける。
一般的な食物アレルギーは、全身のじんましんやせきなどの急性症状を起こすことも多い。卵や乳製品、こむぎの他、オレンジ、キウイ、バナナなどの果物も原因となる。花粉症でなくても発症する。乳幼児期から発症するケースが多い。