広島市中区の耳、鼻、喉の専門医、耳鼻咽喉科、アレルギー科、呼吸器内科

かぜの季節は「中耳炎」に気をつけて

毎年冬になると、かぜから中耳炎になってしまう子どもが増えてきます。特に子どもに多い2つの中耳炎(急性中耳炎、滲出性中耳炎)について、治療法や予防法を広島市医師会理事隅田先生にお話しいただきました。

◆中耳炎とはどのような病気ですか?

中耳炎には様々な種類があり、特に多いのが急性中耳炎と選出性中耳炎です。中耳という小さい空間が鼓膜の奥にあり、正常であればこの空間には空気が入っていますが、ここに異常が起こり、膿(うみ)や水が溜まるのが中耳炎です。

◆どのような症状が出るのですか?

急性中耳炎は、かぜをひいて鼻水が多いときなどに、鼻の奥と中耳をつなぐ管(耳管)を通って、細菌やウイルスが中耳の中に入り起こるものです。鼓膜の奥で細菌やウイルスが活動して膿が溜まるため、急に耳が痛くなり、熱が出ます。その後鼓膜が破れて耳だれが出ることもあります。

滲出性中耳炎は、耳管の機能が何らかの原因で悪くなり、中耳に水が溜まるため、耳が聞こえにくくなったり、ふさがった感じがするという症状があります。痛みがないために気付きにくく、健康診断で初めてわかったり、鼻水が多いため耳鼻咽喉科を受診して偶然にみつかるということも少なくありません。

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◆中耳炎にかかりやすい年齢はありますか?

急性中耳炎は、母親からもらった抗体が少なくなる生後6カ月頃から2歳頃までがかかりやすい年齢です。滲出性中耳炎は、3歳頃から小学校低学年までによく起こります。成人でもかぜをひいたときに一時的に起こることがあり、高齢の方はかぜとは関係なく、治りにくい滲出性中耳炎にかかることがあります。

◆子どもはなぜ繰り返し中耳炎になるのですか?

耳管の機能が未発達で、中耳に細菌やウイルスが入りやすいこと、免疫機能が未発達なうえに、集団生活をしていることが多く、上気道感染(いわゆるかぜ症候群)を起こしやすいことなどが原因です。中耳炎を繰り返しやすいのは、これらの条件が重なっているものと考えられ、1度かかったら繰り返しやすくなるということではありません。

◆耳鼻咽喉科ではどのような治療をするのですか?

otitis_media鼓膜の腫れが非常に強く痛がっている場合、熟が下がらない場合、薬が効きにくい場合などは、鼓膜を切開して膿を出すこともありますが、基本的には耳の状態を見て薬を処方することが中心となります。また、鼻水が多いときには鼻の治療をする場合もあります。

◆治療をすれば治りますか?

急性中耳炎は感染症ですので、感染が治まれば基本的には早く治ります。ただし現在は、抗生物質の多用や、早期保育児童の増加によって、薬の効きにくい細菌(耐性菌※下記参照)を持っている子どもが増えており、そのような場合はやや長引くこともあります。

選出性中耳炎は感染症ではなく、色々な要因が重なって起こっている状態です。かなり長くかかることが多いのですが、長い目で見れば大半は完全に治っていく病気です。

いずれの中耳炎も一部の特殊なケースを除いて、難聴などの後遺症が残ることはありません。

◆普段の生活で何に気をつけたらよいですか?

プールやお風呂で水が耳に入って中耳炎になることを心配される人も多いようですが、そのようなことはありません。中耳に感染が起こるのは、耳の穴からではなく耳管を通って鼻の奥にいる細菌やウイルスが中耳に入ってくるからです。鼻水が多いときに中耳炎になりやすいので、できるだけかぜをひかないように気をつけたり、鼻水が長く続いているときには耳のチェックが必要です。

◆夜やお休みの日に耳が痛くなったらどうすればよいですか?

子どもが急に耳を痛がる場合は急性中耳炎のことが多いのですが、熱冷ましの座薬や頓服を使うことで痛みが楽になります。いったん治まれば翌日に近くの耳鼻咽喉科を受診すれば充分ですので、慌てずに対処するようにしましょう。

耐性菌

1.耐性菌って何ですか?

抗生物質が効きにくい細菌です。

2.耐性菌にはどんな種類がありますか?
  •  メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
  • 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
  • ペ二シlリン耐性肺炎球菌(PRSP)などがあります。
3.なぜ抗生物質が効かないのですか?

細菌が生き延びるために、抗生物質に対抗する仕組みを細菌自体が作り上げるためです。

  1.  不活化酵素産生:抗生物質が細菌の中に入る前に、抗生物質を壊すようなものを細菌自体が作り出します。
  2. 修飾酵素産生:抗生物質に結合すると、その抗生物質が細菌に効かなくなるようなものを細菌自体が作り出します。
  3. 作用点の変化:抗生物質が効くポイントになる弱点を、細菌自体が遺伝子変化によりずらし、抗生物質を効きにくくします。
  4. 薬剤蓄積量の減少:抗生物質が細菌の中に入らないように抗生物質が通り抜ける穴を小さくしたり、逆にどんどんくみ出すような仕組みを細菌自体が作り出します。
4.どうすれば耐性菌から身を守ることができますか?

耐性菌の多くは、もともと抗生物質が効いていたのに、不適切に抗生物質にさらされることで、その能力を獲得していきました。したがって、抗生物質が必要と医師に判断されたときには、十分な量を十分な期間、服用することが大事です。また、不必要と判断された場合(例えば細菌ではなくウイルスによる感染であると診断あるいは強く疑われた場合)は、抗生物質を使用しない勇気も必要です。

(広島大学病院検査部准教授積崎典哉)
広島市医師会の季刊誌キラリVol25 Winterより

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