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補聴器 国内普及せず

 日本は欧米諸国と比べて、補聴器の使用率が低いという。高齢化で補
聴器を必要とする人は多いはずだが、なぜ? 補聴器事情を調べてみた。
 東京都内の電気機器メーカー社長、松本弘一さん(64)は、今年から耳の後ろにかける「耳かけ型」の補聴器を使っている。商談などの会話を聞きとりづらくなったのがきっかけだ。使う前は「老けて見えるのでは」などと不安もあったが、「思い切って使ったら快適で、見た目もスタイリッシュ。ますます仕事に励めそう」と笑顔を見せる。
 補聴器の国内の出荷台数は、2017年に約56万台となり、5年前より約1割増えた。しかし、メーカー10社が加盟する日本補聴器工業会(東京)が15年に約1万4000人に行った調査では、難聴者の割合は11%で、うち補聴器を使っていたのは14%だった。欧米での使用率は、英国42%、ドイツ35%、米国30%だ。
 同工業会普及委員長の木村修造さんは「補聴器を販売する人に公的な資格のないことが、広まらない理由の一つ」と話す。
 補聴器は医薬品医療機器法に定められた医療機器だが、医師の診断がなくても購入できる。補聴器の調整などを行う民間資格「認定補聴器技能者」はあるが、販売店に配置する義務はない。欧米には公的な資格制度があり、「オーディオロジスト」などと呼ばれる資格所有者が聴力検査や補聴器の調整を担うという。
 そのため、日本では、補聴器を購入する際にきちんと説明や調整がなされないこともある。「聞こえない」「不快」などと使用をやめたり、「使いにくい」印象が広まったりしているという。同工業会の調査で、欧米諸国の補聴器使用者の満足度が70~84%なのに、日本は39%にとどまった。
 また、「自費で購入する人が約9割を占め、片方しか買えない人も多い」と木村さん。同工業会によると補聴器の価格は片方の耳あたり15万~20万円台が多く、50万円の高級品もある。買い替えも必要で、目安は約5年だ。
 補聴器は保険適用にならず、障害者総合支援法に基づき、高度の難聴(大きい声でないと聞き取れない)以上の場今基準額内であれば原則1割負担で購入できる。中等度以下でも、医師が記入した書類を提出すれば、医療費控除を受けられ、18歳未満には自治体によって補助がある。
 しかし、デンマークに本社がある補聴器メーカー「GNヒアリングジャパン」によると、欧州では、医師の診断餅あれば、如聴の程度にかかわらず両耳装用が基本。国などによる購入費の一部補助が一般的だ。
 補聴器メーカー「リオン」の太田昌孝さんは「補聴器が身近なものになっていない」と指摘する。同社が昨年、60~74歳の600人に行った調査で「将来、耳が聞こえにくくなった場合、補聴器の使用にためらいがあるか」を聞いたところ「ある」が73%。理由は複数回答で①改善されるかわからない(44%)②使用が煩わしい(43%)③高額だから(42%)などだった。
 GNヒアリングジャパンの野口日登美さんは「最近の補聴器は軽量、小型、多彩なカラーなど、性能、デザインの両面で進化している」と話す。重さが約1グラムしかない補聴器や、スマートフォンと連動して手元で音を調節できるものもある。「選択肢が広がってい
る。補聴器販売店などで試してほしい」と話す。

(読売新聞-谷本陽子氏)

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