広島市中区の耳、鼻、喉の専門医、耳鼻咽喉科、アレルギー科

杉本クリニック便り Vol.122

ご挨拶

院長 医学博士 杉本 一郎
        杉本 喜朗

新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、2024年7月に発行された3種類の新紙幣も、だいぶ流通してきました。一万円札は福沢諭吉から渋沢栄一へ、五千円札は樋口一葉から津田梅子へ、千円札は野口英雄から北里柴三郎へとデザインが刷新されています。

新千円札の北里柴三郎は、「近代日本医学の父」といわれる細菌・微生物学者です。病気の診断や治療に役立つ研究に力を注ぎ、1889年に世界で初めて破傷風菌の純粋培養に」成功しました。その後、破傷風やジフテリアの「血清療法」を確立したり、結核をはじめとしたさまざまな感染症分野の治療や予防に尽力したりしました。近代日本における「予防医学」の礎を築いた人物でもあります。

今回の新紙幣は「ユニバーサルデザイン」、つまり誰もが使いやすい仕様になっています。例えば、目の不自由な人が指で触ってわかりやすいように工夫された識別マークが、お札の種類ごとに違う位置に入っています。また額面の数字は、年齢や国籍を問わず使いやすいように、アラビア数字が大きく表示されました。他にも、お札としては世界初の3Dホログラムや、高精細のすき入れ、特殊インキ、潜像模様、マイクロ文字など、偽装防止のために高い技術が駆使されていますので、お手元の紙幣を傾けたりすかしたりして、じっくり眺めてみましょう。

ちなみに紙幣の裏面も、日本らしく美しいデザインです。例えば新千円札の裏面は葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景(神奈川沖浪裏)で、世界的にも有名です。紙幣のデザインを楽しみ先人の功績に思いをはせながら、お金や健康の大切さについて改めて考え、1年をスタートしてはいかがでしょうか。

今号(2025年冬号)の内容

詳細は「杉本クリニック だより」をご覧下さい。

  • 薬によるトラブルを防ぐため「気をつけたいこと」杉本クリニック便りVol.122
  • レジェンドに聞く「私の健康法」
  • 高齢者の体と心を知る「フレイル予防で健康長寿」
  • 医療機関で行う検査を知ろう
  • 初めての手話
  • 一口病気解説
    「通年性鼻アレルギー」

    薬によるトラブルを防ぐために「気をつけたいこと」

薬によるトラブルをふせぐために年を重ねると、複数の病気で何カ所もの医療機関にかかるようになり、処方される薬も増えていきます。薬の種類が多くなると、飲み忘れが増えるなど管理が難しくなるほか、ふらつきや物忘れなど想定外の有害な出来事が起こることがあります。今回はそんな「薬が多多過ぎる」弊害について解説します。

 高齢になると体のあちらこちらに不調が起こりやすくなり、医療機関を受診する機会が増え、服用する薬の種類も増えていきがちです。厚生労働省の2020年の調査によると、75歳以上の4人に1人弱の患者さんが、7種類以上の薬を薬局で受け取っていました(図1)。
 2000人以上の高齢者を対象とした国内の研究では、6種類以上お薬を処方されている人は、5種類以下の人に比べて、薬によるトラブル(薬剤有害事象)が統計的に多いことが明らかになっています。また、165人の行動を分析した研究の結果、5種類以上の薬を処方されている人は、4種類以下の人に比べて、転倒の頻度が大幅に高いことがわかりました。

 薬が多過ぎることで起こるトラブルとしては、ふらつき、転倒、物忘れ、うつ状態などがあります。「薬が変わってからぼんやりするようになった」「最近よく転ぶ気がする」など気がついたことがあれば、薬の影響かもしれませんので、医師や薬剤師に相談したほうがよいでしょう。

 こうしたことが起こってしまう原因の1つに「処方カスケード」があります。カスケードとは「連なった小さい滝」という意味で、ある薬Aの副作用で起きた体の不調に対して、別の薬Bで症状を抑えようとし、薬Bの副作用に対してまた別の薬Cが処方される、という連鎖が起きてしまうことです。病院や薬局の情報共有が不十分だと、このような流れが起きてしまうことがあります。

 また、高齢になると、それまでと同じ薬を飲んでいても体の反応が変わってくることがあります。薬は口から飲んで胃や腸で吸収されたり注射によって体内に入ったりして、特定の臓器や組織で効き目を発揮します。その後、主に肝臓で分類され、腎臓などから排泄されます。しかし年を取ると、肝臓や腎臓の機能が低下して、薬の分類、排泄のスピードが遅くなりますので、薬の成分が体内に滞留する時間が長くなり、薬が効き過ぎてしまう場合があるのです。有益な作用だけでなく、副作用も強く現れますので、注意が必要です。

 こうように多くの薬を併用することで薬による有害事象や飲み残し、飲み間違いなどが起きやすい状態のことを専門用語で「多剤併用(ポリファーマシー)」と呼びます。患者さんの体調悪化を招きかねないほか、医療経済の面でも無視できませんので、近年、厚生労働省や関連する専門学会などが積極的に改善に取り組んでいます。

お薬手帳を1冊にまとめ、何でも相談できる病医院・薬局を持とう

 多剤併用による弊害を防ぐために、患者さんやご家族にもできることがあります。中でも重要なのが、服用している薬を専門家に共有してもらうこと。そのために簡単で有効なのが、「お薬手帳を1冊にまとめること」です。

 高齢者になるほど薬の種類は増える傾向「別の病院や薬局に見せるのは失礼だから」「個人情報だからできるだけ知られたくない」などの理由で、医療機関ごとや薬局ごとにお薬手帳を分けていないでしょうか(図2)。お薬手帳の最大の目的は、処方されている薬の情報を医師や薬剤師などが共有することで、同じ働きをする薬を重視して処方したり、不適切な飲み合わせになったりするのを防ぐことです。これが多剤併用を未然に防ぐことにもつながります。医師や薬剤師、看護師などの医療関係者は患者さんの情報を漏らさない法的な義務を負っていますので、安心して提示してください。それでももし「ほかの医師に知られるのは気まずい」などと思うなら、自分が信頼できる薬局や薬剤師に、使い分けている全てのお薬手帳を渡してチェックしてもらうとよいでしょう。

 このほか、高齢者の多剤併用によるトラブルを防ぐ方法として、「高齢者の多剤処方見渡しのための医師・薬剤師連携ガイド作成に関連する研究」研究班などは、患者さんが注意することとして、次のようなポイントを挙げています。

・自己判断で薬の使用を中断しなしお薬手帳は1冊にしよう

・使っている薬を、医師や薬剤師に正確に伝える

・むやみに薬を欲しがらない

多剤併用によるトラブルを防ぐ取り組みは、薬代の節約にもなり、ひいては国民医療費の適正化にもつながります。健康のためにも、家計や環境のためにも薬の適切な利用を意識しましょう。

 


高齢者の体と心を知る フレイル予防で健康長寿
フレイル予防で健康長寿

要介護状態にならないために

フレイルは、簡単に言えば「健康」と「要介護状態」の間の「弱っている状態」です。早めの対策で予防・改善し、人生100年時代を自分らしく生き切りましょう。

監修:杏林大学医学部高齢医学教授 
   一般社団法人日本老齢医学部会理事長 神崎亘一氏

全身の健康状態に影響する‘’オーラルフレイル‘’とは

始まりは、ささいな口の衰え

 オーラルフレイルは、自身の歯の減少や食べることに関するちょっとした衰えが重なり、口の機能が低下する危険が増えている状態を指します。
 ささいな口の衰えには、食事の時にむせる、硬いものが食べにくくなった、滑舌が悪くなった、などが挙げられます。
 そのままにすると、噛む機能が下がります。また柔らかいものを好んで食べるようになると、栄養バランスが偏ってしまします。
 症状が進むと、食事をとること自体が難しくなり、食欲不振、孤食、低栄養など全身のフレイルにもつながります。
 口は、食べるだけでなく、「話す」「笑う」「表情を作る」などの、社会とのつながりを保つために重要な役割を担っています。しかしオーラルフレイルになると、そうした交流が難しくなるのです。

死亡リスクも高まる

 オーラルフレイルの人は、そうではない人に比べて、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が約2.4倍という調査もあります(日本歯科医師会調べ)。
 幸いなことに、オーラルフレイルは予防ができますし、オーラルフレイルになっても、適切な対策を講じることで、口の機能を再び健康な状態に近づけることができます。病気と同じように、早く気がついて、予防・改善に努めることが肝心です。

予防のポイント

 オーラルフレイルの予防には、日ごろから意識的に口を動かすことが大切です。無理のない範囲で食事に噛みごたえのある食材を混ぜて、よく噛むとよいでしょう。周りの人と積極的に会話をすることも大切です。
 何よりも口の軽微な衰えに気がつくことが重要ですので、かかりつけの歯科を持つことをお勧めします。

あなたは大丈夫⁉オーラルフレイル危険度チェック

オーラルフレイル危険度チェック

危険度チェックで自身の口の健康状態を知っておきましょう(表)。5つの項目のうち、2つ以上に該当するとオーラルフレイルです。気になることがある人は、かかりつけの医師・歯科医師に相談してください。

 


検査機関で行う検査を知ろう

医療機関で行う検査を知ろう

尿検査と便検査

健康診断や人間ドック、医療機関受診時などに行われる検査について、検査の目的、検査方法と検査を受ける時の注意ポイント、検査結果の見方などを開設していきます。

尿が語る体の様々な変化

 尿検査は、尿の中の成分を調べることで、病気やその兆候がわかる検査です。尿は腎臓で血液からつくられます。血液中の成分や水分が腎臓で濾過され、不要な成分が尿として尿管を通って膀胱に運ばれ、体内に排出されます。その量は1日に約1.5リットル。ところが腎臓の動きが悪くなるなど、何らかの問題が起こると、通常は排出されるはずの物質が体内に残ってしまったり、通常は排出されないはずの蛋白や糖が尿中に出てしまうことがあるのです。
 健康診断の尿検査は、基準値以上の蛋白、糖、潜血が排出されていないかどうかを調べるものです。尿試験紙を尿に浸し、色の変化で判定しています。生活習慣病の予防のための特定健康診査では、尿蛋白と尿糖が必須項目になっています。

尿検査で気をつけることは?

 健康診断の尿検査では、排尿初めの尿は捨てて、途中から採取するようにします。排尿初めの尿には、尿道口の分泌物や雑菌が混入しやすいためです。
 検査前日は入浴して陰部を清潔にします。尿は食事や運動、薬剤によって成分が変動しますので、検査前日はビタミンCなどのビタミン剤やサプリメントは控えます。また激しい運動やストレスで尿蛋白や尿潜血が陽性になることがありますので、検査前日は軽い運動にしましょう。
 月経中の場合、尿に血液が混じる可能性があるので、検査を控える、あるいは月経中であることを申し出るようにします。

便に混じった血液で大腸がんの早期発見

 健康診断で行われる便(潜血)検査は、便に混じった微量な血液の有無を調べる大腸がんの検査です。便中のヘモグロビンを検出する免疫法が一般的に用いられています。
 通常、2日間に分けて便を採取します。2日とも陰性(―)の時は異常なし、1日でも陽性(+)の時は異常と判定されます。以上の場合は、大腸などの消化管からの出血が疑われるため、内視鏡検査が必要になります。
 便検査にはこのほか細菌やウイルス、寄生虫の有無を調べる検査があります。

便検査で気をつけることは?便潜血検査

 便検査は、前日の食事が検査結果に影響することはありません。しかし痔や月経中の時は便に血液が混ざることがありますので、便検査は月経中を避けて受けるようにします。
 採便はできるだけ提出当日か前日、あるいは前々日に行います。室温で長時間放置すると、血液中のヘモグロビンが変化してしまうため、冷暗所で保管します。気温が高い時は冷蔵庫や保冷剤を入れた容器で保存しましょう。


一口病気解説 通年性鼻アレルギー

 主にダニやそのフン、死骸、ホコリなどが体内に侵入することで、鼻の粘膜にアレルギー反応を起こすのが、通年性鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)です。年間を通して症状が起きるため、ある一定の機関だけアレルギー反応を示す花粉症などと区別してこのように呼ばれます。アレルギーの原因を引き起こす物質をアレルゲンといいますが、ダニの他にも、真菌(カビ)、ペットの毛やフケ、昆虫などもアレルゲンとなります。アレルゲン1
 主な症状は、連続して何回も出るくしゃみや、サラサラした無色で水溶性の鼻水、鼻づまりで、鼻の中のかゆみや熱感、鼻血などが見られることもあります。また鼻の症状だけでなく、目のかゆみや充血、涙目、喉の痛み、注意力散漫、不眠などを伴うケースもあります。

治療には、まずアレルゲンを特定するために、問診や鼻汁検査、皮膚反応テスト、鼻鏡検査、血液検査などを行います。そして、アレルゲンを除去・回避するとともに、必要に応じて、薬物療法(減感作療法)、手術療法などを行います。
 薬物療法では、症状や程度に応じて、ケミカルメディエーター遊里抑制薬、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬、漢方薬などを使用します。アレルゲン2
 アレルゲン免疫療法は、少量のアレルゲンの希釈液を皮下注射や舌下内服によって体内に取り込み、徐々に体をアレルゲンに慣らして、症状を緩和していく治療法です。長期にわたって症状を抑えられる可能性がありますが、通院回数や治療期間が長かったり、副作用が現れたり、治療できるアレルゲンの種類が限られていたりします。
 アレルギー症状に対してさまざまな民間療法がありますが、安易に飛びつくのは危険です。医師の診察を受けて適切な治療を行うとともに、規制正しい生活を送り、体調を良好に保ことも大切です。


 

耳鼻咽喉科、アレルギー科 TEL 082-241-4187 月曜日午前中のみ 9:00~11:30
休診日:日曜日・祝日 終了受付時間:17:40まで

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