広島市中区の耳、鼻、喉の専門医、耳鼻咽喉科、アレルギー科、呼吸器内科

「iPS」10年創薬も加速 難病の原因再現・増殖させ薬効確認

山中伸弥・京都大教授(55)らによる人のiPS細胞(人口多能性幹細胞)作製の発表から11月21日で10年を迎えた。今年9月には、難病患者のiPS細胞で見つけた治療薬候補の臨床試験(治験)が、京大病院で始まり、新しい薬の開発を目指す創薬への応用は新たな段階に入った。
「iPS細胞の応用は再生医療と考えがちだが、私たちの最大の目標は難病や希少疾患の創薬だ」。iPS細胞の利点
2010年5月、京大iPS細胞研究所の開所式で、所長の山中教授は強調した。失われた体の機能を回復する再生医療に並び、創薬の重要性を訴えたものだ。
再生医療では14年、理化学研究所などが目の難病患者に対しては初の臨床研究を実施。来年には心臓や脊髄の病気に対する臨床研究も予定されるなど、世界をリードしている。
今回の治験は、創薬分野での応用の第一歩となった。対象は筋肉が骨に変わる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)の患者だ。国内患者数は推定約60~80人と極めて少ないが、患者の皮膚提供を機に研究が進んだ。
治験では、すでに臓器移植での拒否反応を防ぐのに使われている薬「ラパマイシン」を試す。患者の細胞から作ったiPS細胞進行性骨化性線維異形成症を利用して病気を再現し、約6800種類の化合物を個々に細胞に振り分け、この薬の効果があることを発見した。
山中教授rがiPS細胞の創薬応用を重視するのは、患者の皮膚や血液をわずかに採取するだけで、病気の原因になる細胞を大量に増殖でき、膨大な種類の治療薬候補を調べられる利点があるからだ。実際、海外では再生医療よりも創薬分野の競争が激化している。
一般的に、病気の原因となる細胞を患者の体から採取するのは困難で、取り出せたとしてもほとんど増殖しない。このため創薬研究ではマウスなどの実験動物で病気を再現し、薬を試すのが主流だが、動物と人手は薬の効き目が違うことも多い。特に難病の場合は、動物で再現できるケース自体が限られるため、iPS細胞の誕生以前は研究が進まなかった。
治験責任者の戸口田淳也・京大iPS細胞研究所副所長は「予想外のスピードで研究が進み、iPS細胞の力を実感した」と振り返る。
またFOPのように患者数が少ない希少疾患は、多額の投資に見合う利益を得にくいため、製薬企業が創薬に乗り出してこなかった。すでにある薬の新しい効果を見いだせるのも大きな利点だ。他にも複数の希少疾患で、効果が期待される既存薬が見つかり、治験に向けた準備が進む。
通常、新薬開発には数百億~1000億円超の費用がかかるうえ、実用化できる成功率は2万~3万分の1とされる。iPS細胞と既存薬を組み合わせることで、費用の大幅削減と開発効率の向上が見込めると期待される。

 副作用の有無早期に判断

iPS細胞は、薬の効き目だけでなく、副作用を確認する研究も活用され始めている。製薬会社「エーザイ」(京都府)では、薬の候補物質を探す段階で、健康な人のiPS細胞から作った心臓の筋肉(心筋)細胞を用いて、不整脈を引き起こす恐れがないかを調べている。薬の開発を中断に追い込む副作用で最も多いとされるのが、心臓への副作用だからだ。
宮本憲優・同社主管研究員は「より早い段階で副作用の有無が分かるので、損失を避けられる」と話す。
iPS細胞を利用した副作用試験は、製薬会社の自主的な活用にとどまらない。治験の国際的な基準に取り入れる検討も国内外で進む。澤田光平・東京大特任教授(安全性薬理)は「薬の影響を受けやすい膵臓や神経の細胞も、iPS細胞から作って副作用試験に使われていくだろう」と指摘する。
長所の一方で課題もある。京大チームは9月、ダウン症の人から作ったiPS細胞などを利用し、マウスで胎児期の症状進行を抑える化合物を特定したと発表した。将来、出生前診断で異常が見つかった胎児の薬に繋がる可能性もあるが、実際には妊婦に投与できるかなど、安全面や倫理面で議論が起きるのは必至で、実現へのハードルは高い。
また、研究が進むのは原因遺伝子が一つの希少疾患で、複数の遺伝子がかかわる病気や、原因遺伝子が不明な病気をiPS細胞で再現するのは難しい。細胞レベルで治験効果がみられても、患者に投与した場合に全く同じ効果があるとは限らない。
赤松和土・順天堂大特任教授(再生医療)は「薬の有効性を正確に検証するには、より人体に近い立体的な膵臓をiPS細胞から作るなどの技術も必要だ」と指摘する。

京都大が進めるiPS細胞を活用した創薬研究
疾患 主な症状 国内患者数
進行性骨化性線維異形成症(FOP) 筋肉が骨に変わる 約60~80人
軟骨無形成症 低身長、手足の短縮 約6000人
タフトフォリック骨異形成症 肋骨の形成不全による呼吸困難 約100人
筋委縮性側索硬化症(ALS) 体が徐々に動かなくなる 約9200人
アルツハイマー病 記憶障害、認知機能障害 約53万4000人

耳鼻咽喉科、アレルギー科、呼吸器内科 TEL 082-241-4187 月曜日午前中のみ 9:00~11:30
休診日 日曜日・祝日

PAGETOP
Copyright © 杉本クリニック All Rights Reserved.