広島市中区の耳、鼻、喉の専門医、耳鼻咽喉科、アレルギー科、呼吸器内科

杉本クリニック便り Vol.107

ご挨拶

院長 医学博士 杉本 一郎

杉本 嘉朗

 1日ごとに春の訪れを感じるようになりました。暖かい日差しとともに、早く普通の日常が戻ることを願ってやみません。
さて、昔から「春眠暁を覚えず」というように春は眠気を感じやすい季節です。しかし、もし日中のだるさや眠気が強いようなら、それは病気かもしれません。
交通事故との関連などで「睡眠時無呼吸症候群 (SAS)」という病名を聞いたことがあると思いますが、文字通り、睡眠中に呼吸が止まる病気です。その多くは、眠っている間に舌が喉の奥に落ち込んだり喉周囲の筋肉が緩んだりして、気道が閉塞して起こります。気道が狭い状態で息を吸うと「いびき」になりますが、気道が塞がってしまうと「無呼吸」、つまり息を止めているのと同じ状態になります。SASでは、10秒以上呼吸が止まる無呼吸が、1時間に5回以上起こります。
無呼吸状態が続くと生命の危険があるため、脳が起こされて呼吸は再開します。しかし睡眠中に何度も脳が起こされるわけですから、当然眠りは浅く、起床時に熟眠感がなかったり頭痛がしたり、日中だるかったり眠かったりするのです。肥満との関連が大きい病気ですが、太っていなくても、顎が小さい人などでも起こりやすいことが知られています。
SASは、軽ければ口腔内装具(マウスピース) などで治療できます。重度の場合には、睡眠時に、鼻マスクを装着して機器から圧のかかった空気を送り込む「CPAP (シーパップ)」療法を行います。また、肥満の人は減量が必要です。
この病気は、前述のような症状で日常生活に支障を来すだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、不整脈、高血圧、糖尿病、免疫力の低下などにもつながります。周りの人にいびきを指摘される人や症状に心当たりのある人は、医師にご相談ください。。


今号の内容

詳細は「杉本クリニック だより」をご覧下さい

  • 40歳を過ぎたら目の病気にご用心
    気がつきにくい 進行すると失明かも

    杉本クリニック便りVol.107

    杉本クリニック便りVol.107

  • そうだったんだ 体のしくみ
    喉(咽頭・喉頭)編
  • 初めての介護サービス
    毎月の介護費用が負担になる前に
  • お薬百科 医療機関で処方される薬を知ろう
    抗リウマチ薬編
  • 空の歳時記学
    春~夏の暮らしの風景編
  • 一口病気解説
    「花粉症」

杉本クリニックだよりは窓口で無料でお配りしています。


 

40歳を過ぎたら目の病気にご用心

目の病気にご用心

人生100年時代といわれる中、例えば70歳で視力が失われれば、20~30年もの間、不自由な生活を余儀なくされることになります。目の健康を保つことは、生活の質を保つ上で大切です。
今回は、高齢者に多い目の病気の中で、遺伝の影響が少なく、誰でもかかる可能性のある緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、白内障などのついて解説します。

 

40歳を過ぎて中高年から高齢に差し掛かると、目の病気にかかる人が増えてきます。緑内障、白内障、加齢黄斑変性などがそれで、いつの問にか発症し、普通の健康診断や人間ドックでも、なかなか発見できません。
しかし、放置すると失明の原因にもなり、進行するほど治療の効果も上がらなくなります。それぞれの病気の特徴や治療について解説していきましょう。

増えている緑内障

●日本人の失明原因第1位
緑内障は、光を感じて脳に伝える視神経が眼圧によって損傷し、見える範囲 (視野)が次第に失われていく病気です。視野の中に見えない部分ができ、進行するとその範囲が次第に広がっていきます(図1)。厚生労働省調査研究班の報告によると、2015年度に新たに視覚障害に認定された人の原因疾患の中では、緑内障が28,6%を占め、第1緑内障の見え方位でした。
日本人の緑内障の約7割は、眼圧が正常範囲なのに視神経が損傷する「正常眼圧緑内障」です。
それほど高くない眼圧でも視神経がダメージを受けるタイプなので、眼圧が正常範囲なら安心とは限りません。

●水分の排出を促して眼圧を下げる
緑内障が見つかった場合には、眼圧を下げる治療が行われます。主な治療法としては、点眼薬(目薬)、レーザー治療、外科手術があります。カギになるのは日の中の水分です。
眼球の中は、房水と呼ばれる体液が満たされています。眼球からの出口が狭かったり目詰まりしていると、排出速度が落ちて眼圧が高くなってしまいます。
このため、房水の排出を促す点眼薬を投与したり、レーザー光や手術で出口を広げる治療が行われます。
こうした治療によって神経細胞の減少をくい止めることができますが、いったん損傷して失われた細胞を元通りにすることはできません。そのためにも、早期発見により、できるだけ早い段階で治療を始めることが大切です。
しかし、正常眼圧緑内障の場合、目に一瞬ぶっと空気を当てる眼圧検査では見つからない場合があります。
早期発見のためには、視野の測定や、目の奥の写真を撮って視神経の障害が起きているかどうかを調べる必要があります。緑内障にかかっている人は60歳代から急激に増加しますので、できれば50歳代までに 「緑内障が心配なので検査してほしい」と申し出て検査を受けるとよいでしょう。

糖尿病網膜症

●糖尿病の人は「かかる」と思って検査・受診を
糖尿病網膜症は、緑内障、網膜色素変性に次いで、視覚障害の原因の第3位を占めます。
糖尿病になってから10~15年経ってから発症することが多く、また、視力障害が起きる直前まで自覚症状が出ないのが特徴です。
糖尿病網膜症が進行して末期に近づくと、眼球の大部分を占める硝子体に向かって異常な血管が伸びていきます。こうした血管はもろく、破れると失明リスクとなる硝子体出血や網膜剥離を起こします。
日本眼科学会理事長の寺崎浩子氏は、「糖尿病や食後高血糖などの糖尿病予備軍になったら、いずれは網膜症になると考えておくべき。症状がなくても眼科を受診して、医師の勧めに応じて1年、あるいは半年ごとに目の検査を続け、早期発見、早期治療に努めてほしい」と強調しています。

加齢黄斑変性

●視野の中心が見えにくくなる
加齢黄斑変性は、目の奥にある網膜の一部に異常が起きる病気です。視野の中心部がゆがむ、かすんだり黒く見えたりする、欠けて見えなくなるといった症状が現れ、次第にひどくなっていきます(図2)加齢黄斑変性の見え方
細かいものの識別や色を見分ける機能など、見る能力のほとんどを担っています。老化によって、この黄斑に異常が起きる病気が加齢黄斑変性です。
病気にかかる割合 (有病率)は近年、増加傾向にあるとされています。しかも高齢になればなるほど、その割合は増えます。
加齢黄斑変性には、黄斑の)と、黄斑の部分の網膜の下側に異常な血管が増えてしまうタイプ(溶出型)があり、日本人では9割前後が後者のタイプです。
溶出型に対しては、異常な血管が増えないようにする治療が行われます。主な治療法としては、抗血管新生療法と光線力学療法があり、現在、主流となっているのは抗血管新生療法です。これは血管が新しくできるのを抑える薬を用いるもので、黄斑変性がある眼球内に直接注射します。これらの治療法が普及したことで、早期発見すれば進行を抑えられるようになってきました。

白内障

●負担の少ない手術が普及
白内障は、目の内部でレンズの働きをしている水晶体が濁ってしまう病気です。白内障が進行して濁りがひどくなってくると、日がかすむ、物が二重に見える、まぶしさを感じる、視力が落ちるなどといった症状が現れます(図3)。白内障
放置すれば、次第に濁りが濃く広がって、失明の原因にもなります。
治療としては、濁った水晶体を砕いて取り除き、代わりに小さなレンズを目の中に埋め込む外科手術が行われます。通常、局所麻酔で手術が行われます。ほかの目の病気がなく、全身の状態が良い場合、病院によっては日帰り手術も可能です。
目の病気は、急性の緑内障などを除くと苦痛が少ないため、後回しにしがちですが、生活の質を保つためには早期発見、早期治療が大切です。また、血管の健康度が関係する病気が多いので、喫煙を控え、抗酸化物質を含む野菜や魚をとるなど健康な食生活が重要です。そして、誕生日など、節目の時期ごとに、医療機関を受診して相談することをお勧めします。


初めての介護サービス

初めての介護サービス

毎月の介護費用が負担になる前に

介護保険制度を利用して介護サービスを受ける場合の費用は、全て介護保険で賄われるわけではなく、利用者本人の所得に応じた自己負担分(費用全体の1割、2割、3割)を支払う必要があります。

介護費用の目安は?

実際に、介護費用はどのぐらい必要なのでしょうか?
在宅介護の平均的費用については、いくつか調査がなされています。家計経済研究所の「在宅介護のお金と負担」(2017年6月)によると、在宅介護費用の平均は5万円/月です。これは、訪問ヘルパーなど介護保険による介護サービス利用の費用と、医療費やおむつ代など介護サービス以外の費用を足した金額です。
また、生命保険文化センターの「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」では、介護費用の平均額は7.8万円/月で、介護期間で一番多かったのが、4~10年未満(甲3%)との結果が出ています。

負担を軽くする制度があります

医療費やおむつ代もかかりますし、両親ともに介護が必要になったら10年も払い続けられるの?と不安に思った人も多いのではないでしょうか。
実は、介護サービスを利用する場合に利用者が支払う自己負担額には、月々の負担上限額が設定されていています。
1カ月に支払った金額がこの上限を超えた時には、超えた金額が払い戻されるのです。「高額介護サービス費支給制度」と呼ばれる制度です。
一度申請すれば、以降は、上限を超えて支払った分が、自動的に指定の口座に振り込まれます。負担上限額には、施設の食費や宿泊費、住宅改修費、福祉用具購入費は含まれません。
同じように、入院や通院治療などの医療費が医療保険で設定された上限を超えた時に払い戻されるのが「高額療養費制度」です。
また、医療費と介護費の両方の1年間の自己負担額が、上限金額を超えた時に超過分が払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあります。こちらは、高額介護サービス費支給制度、高額療養費制度で支給された金額は、差し引く必要があります。
そのほかにも、おむつ代の助成など各市区町村で独自に実施しているサービスがないかどうか調べてみるとよいでしょう。医療費がかさんだ場合には、確定申告で医療費控除を受けることもできます。

全て申請が必要

これらの負担軽減制度は、案内が届いたりすることはなく、利用者や家族から申請をする必要があります。条件をクリアしていれば、申請するだけで負担が軽くなりますので、忘れないで申請しましょう。

利用者の希望が大切

ケアマネジャーが本人や家族などと相談の上、サービスを利用する人の体の状態や生活環境を考慮し、現状で最適と思われるケアプランを組み立てています。自己負担の金額を減らすために無理に利用の抑制をするのではなく、「必要なサービスはきちんと利用するけれども、軽減措置という制度も上手に利用して介護生活を乗り切る」ということだと考えましよう。
コロナ禍で、介護をサポートする側の状況も変わることがありますので、より柔軟な対応が求められています。日頃からケアマネジャーとよく相談しておくことが大切です。


お薬百科 医療機関で処方される薬を知ろう!

お薬百科抗リュウマチ薬編

関節リウマチは免疫の異常によって炎症が起き、手足の指などの関節や骨が次第に破壊されていく病気で、30~50歳代の働き盛りの女性に多く発症します。
しかし2000年代に入ってから新しい薬剤が次々と登場し、早い段階から積極的に薬を使うことで関節や骨の破壊を防ぐ治療法が普及したために、多くの患者さんがより長期間、健康な人と変わらない生活の質を保てるようになってきました。
関節リウマチ治療の中心となる抗リウマチ薬には、1.従来型抗リウマチ薬、2.生物学的製剤、3.JAK阻害薬の3種類があります。また、症状などに応じて、炎症を抑えるステロイド薬、痛みや炎症を抑える非ステロイド抗炎症薬などが用いられることもあります。

従来型抗リウマチ薬

従来型抗リウマチ薬の多くは、生物学的製剤が登場する以前から、関節リウマチ治療薬として用いられてきた薬で、ほとんどが経口薬(飲み薬)です。
この中でメトトレキサート(MTX)は日本で1999年に承認された薬で、関節リウマチ治療でまず初めに使うべき薬(第1選択薬)と位置づけられています。この薬だけで関節破壊の進行を抑えられる場合も多いことが確認されています。
肝機能障害がある場合など、MTXを使うことができないか、使っても効果が不十分な場合は、まず他の従来型抗リウマチ薬に切り替えるかMTXと併用します。それでも効果不十分な場合は、後
で述べる生物学的製剤やJAK阻害薬の使用が検討されます。

生物学的製剤

生物学的製剤は、体の中で関節リウマチの症状を引き起こす特定の物質の働きを抑える薬です。MTXを含む従来型抗リウマチ薬では十分な治療効果が上がらない場合に処方されます。インフルエンザ予防のために打つワクチンも、生物学的製剤の一種です。
日本では2003年に、関節リウマチに保険適用された初の生物学的製剤であるレミケードが承認されました。現在までに8種類(一般薬のジエネリック薬に相当する「バイオシミラー」を加えると10種類)が保険診療で使うことができるようになっています。
生物学的製剤が登場したことで、関節リウマチの治療は大きく改善し、早期に発見して適切に治療すれば、長期にわたって関節の機能を維持できるようになりました。
ただし、生物学的製剤は、1年間の標準的な薬剤費が120万~180万円、3割負担でも40万~60万円と高価であること、また、全て注射薬または点滴薬であるため、患者さんの負担が大きいという問題点もあります。

JAK阻害薬

JAK阻害薬は関節リウマチで炎症を引き起こすメカニズムの1つである「ヤヌスキナーゼ(JAK)」という分子の働きを抑える薬で、日本では5種類が関節リウマチ用に発売されています。
臨床試験の結果などから、生物学的製剤に匹敵する治療効果が確認されており、関節リウマチ治療の選択肢となっています。生物学的製剤と異なり、経口薬ですが、薬価は生物学的製剤とほぼ同じ水準です。
関節リウマチは発症すると完全に治ることは少なく、長期間の治療が必要です。早期に発見して現在標準となっている治療を受ければ、多くの人が生活の質を保つことができるようになりました。ただし、関節リウマチの患者さんでは肺や腎臓の病気が起きやすいことや、免疫を抑える治療であるため、感染症にかかりやすいことなど注意点もあり、治療とともに定期的な検査を受けることが大切です。


一口病気解説 花粉症

花粉症は、花粉に接触するとくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の痺み、頭痛、だるさなどの不快な症状を引き起こすアレルギー疾患です。スギ林の増加や大気汚染の影響で、スギ花粉症の患者数は、今や日本では人口の約25%にも達しています。
原因となるのはスギ花粉だけでなく、春はヒノキ科の植物、夏はイネ科やガマ科の植物、また秋にはブタクサやヨモギなどキク科の植物と、季節ごとにさまざまな植物によって花粉症は引き起こされます。花粉症
治療法としては、抗ヒスタミン薬の内服、点鼻薬や点眼薬の使用などの対症療法があります。スギ花粉が飛散する予測日の1~2週間前から抗アレルギー薬を服用し、症状を軽くする初期療法も有効です。花粉症でお悩みの人は医師にご相談ください。いつから、どのくらい服用するかには個人差がありますから、自己判断で服用しないようにしてください。
そのほか、減感作療法のように、長期間かけて花粉への抵抗力をつけていく治療法もありますが、何より肝心なのは、花粉症の予防対策が大切です。
予防は、花粉を避ける生活をすることが主眼になります。花粉飛散の予報は、テレビや新周、天気予報サイトなどにも出ていますから、これらを参考にして、花粉の飛散量が多いと予想された日には、できるだけ外出を控えることです。外出する場合には、花粉の飛散が少ない早朝や夜間を選んだり、マスク、眼鏡を着用するようにしましょう。また、帰宅したら、うがい、洗顔、鼻をかむ、などにより、付着した花粉を少しでも取り除くことが大事です。

耳鼻咽喉科、アレルギー科、呼吸器内科 TEL 082-241-4187 月曜日午前中のみ 9:00~11:30
休診日 日曜日・祝日

PAGETOP
Copyright © 杉本クリニック All Rights Reserved.