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担当医制、戸惑う患者 医師側定額報酬制度に反発

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担当医制、戸惑う患者-混乱続く後期高齢者医療制度

医師側定額報酬制度に反発

後期高齢者医療制度で75歳以上の医療はこう変わる

  •  担当医が3ヵ月に1回程度、診療計画書を作成
  • 「お薬手帳」で薬の飲み方を支援
  • 24時間訪問看護を受けやすく
  • 歯科訪問診療体制を拡充
  • 医師、歯科医、薬剤師、看護師などのチームが病状急変をケア
  • 終末期の診療方針を文書化(見直しを検討)

四月一目のスタートから混乱が続く七十五歳以上を対象とした後期高齢者医療制度。与野党入り乱れての見直し論議は、二カ月近くたっても決着せず、高齢者の不安と怒りは収まらない。背景には、新たな制度の下で、どのような医療が受けられるのかが、見えてこないという事情もある。患者、医師の目に、新制度はどう映るのか--。 大阪市城東区に住む松田文子さん(77)は腰痛やふらつきなどの症状があり、三カ所の診療所に通っている。目下の大きな悩みは、後期高齢者医療制度の目玉の一つである「担当医制」。「誰か一人の先生に決めたら、ほかの先生にはもう診てもらえないのだろうか」

同市のクリニックで松田さんの診察にあたる松本一生医師は「お年寄りは『この先生には、この程度までなら相談して大丈夫』 『この先生は土日でも診てくれる』と、病院や診療所を使い分けている。担当医を選ぶことが、病気と付き合いながら生活する高齢者にとって、ストレスになっている」と指摘する。

新たな制度では、慢性疾患を持つ七十五歳以上の人(入院患者を除く)は、担当医を決めることができる。対象疾患は糖尿病、脂質異常、高血圧、認知症など十三。そのうち一つが「主病」と認定される。

いつでも変更OK

一人の医師が責任を持って患者の体調や病状を管理し、必要があれば専門医や病院に橋渡しするというのが、担当医制の趣旨だ。患者の同意の下、治療計画作りのほか、飲み合わせの悪い服薬の防止などに取り組む。

実際、多くの診療科にかかる高齢者にとって、飲み合わせは深刻な問題。

杏林大医学部の鳥羽研二教授(高齢医学)が薬の整理を依頼されたある患者は、消化器外科や循環器内科、精神科など五つの診療科から十四種類の薬が出されていた。患者は転倒と物忘れの症状を訴えていたが、各科からばらばらに処方された薬の飲み合わせが影響していたことが判明。

鳥羽教授は「担当医には、ある症状が出たら単純に薬を付け加えるのではなく、生活機能を落とさない医療を心がける必要がある」と訴える。

担当医を持つことは義務ではなく、慢性疾患を持つ患者が必要と思えば医師に申し出ればよい。患者の希望でいつでも変更することも可能。松本医師も「今すぐ、どうしても決めなければいけないというわけではないですよ」と松田さんに説明した。

四月一日の新制度スタート以降、高齢者の悩みは尽きない。「診療報酬に枠がはめられて、必要な検査などが制限されると聞いたが、因る」「これから先、保険料の負担がもっと上がれば、とても年金だけでは生活できない」。各地の診療所や病院には、相談が殺到している。

診療報酬を巡っては、月額の診療報酬を六百点(一点は十円)の定額とする「包括点数制」が導入され、医師らが猛反発した。四十七都道府県医師会のうち、二十以上の医師会が会員に〝ボイコット〟を求める事態となり、患者も不安に駆られている。

「必要検査できず」

二〇〇八年度の診療報酬改定によると、六百点は六歳未満の極めて重症な乳幼児の入院を一回受け入れたときに、医療機関に加算される点数と同じ。「ほかの医療機関との連携業務まで考えると、この点数では厳しい。必要な検査すらできなくなる」と話す医師は多い。

包括点数制が導入されたのは、医師が高齢者に不必要な検査などを繰り返すことで、医療費が際限なく膨らむのを防ぐためだが、従来通り、実際に患者に行った検査や画像診断などの点数を積み上げる「出来高払い」を医師が選ぶ道も残されている。 各地の医師会でストップがかかったことも影響し、包括点数採用の届け出をして担当医の資格を得たのは、全国の内科診療所(約六万三千カ所)の一四%(四月十四日現在)にとどまる。このままでは高齢者が担当医を選ぼうにも難しい状況で、厚生労働省は「趣旨を理解してほしい」とアピールに躍起だ。

新制度では、患者の死が避けられない終末期についても「後期高齢者終末期相談支援料」として、二百点の診療報酬がついた。医師や看護師のチームが、患者や家族と終末期の診療方針について話し合い、文書や映像にまとめると算定される。日本では死について話し合うことにタブー感があり、「高齢者は早く死んでほしいというように聞こえる」と感情的な反発も出た。舛添要一厚労相は「一時凍結も検討する」という。

鳥羽教授は「終末期医療について、いきなり医療費の面から入ったのは良くなかった」と指摘。「亡くなる間際ではなく、これを機に、もっと前から死についての教育や議論を本格的に始めなければならない」と話す。松本医師も「これまでの日本をつくってきたお年寄りを皆でどう支えていくのかという観点で考えるべきだ」と訴えている。

制度名でも怒りの声 「後期高齢者とは失礼な」 行政の鈍感さ、混乱の一因

「思いやりを感じない」と野党から批判があがるなど、名称からつまずいた後期高齢者制度。元々は英語からの訳語で、一九八〇年代には「特にケアが必要になってくる年齢」という意味で医療、行政用語として定着していたが、今回は猛反発を招いた。

「我々はもう不要という意味なのか」 「後期と言われるほど年寄りではない」。怒りの声が渦巻き、政府は慌てて「長寿医療制度」と言い換えた。

七十五歳以上になると、糖尿病や高血圧など生活習慣病になる人の割合が上昇するという説もあるが、厚生労働省も明確に説明できない。「法案を作った二〇〇六年当時から、後期高齢者という言い方に特別な意識はなかった」と同省幹部。行政側のこうした鈍感さが、混乱を招いた一因ともいえそうだ。

千葉県木更津市では、保険料徴収の通知書の発送をめぐってトラブルが起きた。黒い縁取りの封筒を使用したことに「縁起が悪い」と苦情が相次ぎ、同市は「配慮が足りなかった」として謝罪。七十九歳のある女性は「戦争で苦労した世代なのに、なぜこんな仕打ちを受けなければならないのか」と嘆いている。

日本経済新聞 2008.5.25 より

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